1)エンハンサートラップ系統を用いて、極細胞で活性化するエンハンサーおよびエンハンサーにより制御される遺伝子を単離する計画は進行中である。この遺伝子の単離とは別に、極細胞で活性化されるエンハンサーの制御機構が明らかとなった。エンハンサートラップ系統として同定されているエンハンサーは全て極細胞が胚の生殖巣に取り込まれるステージで活性化されるが、これ以前のステージでは、極細胞中に存在するNanos蛋白質の働きによりこれらのエンハンサー活性が抑制されていることを示唆する結果が得られた。Nanos蛋白質は、胚の前後軸極性の形成に関わる分子の一つであるが、胚の基本的なボディプランを決める分子が極細胞中でエンハンサー活性を調節するという結果は、誰もが予想しえなかった結果であり、今後Nanosにより調節されるエンハンサーおよび遺伝子を単離しその機能を解析することにより、Nanosによる遺伝子発現調節機構の意義が明らかになると考えている。 2)RNAディファレンシャルディスプレー法を用いて、極細胞(生殖巣に取り込まれるステージ)で発現するmRNAの候補を5つ単離した。今後は、この結果を確認すると共に、このmRNAをコードする遺伝子の構造、機能を解析する予定である。 当初の計画では、平成7年度には、エンハンサートラップ法、RNAディファレンシャルディスプレー法により極細胞で活性化される遺伝子を単離する計画であった。RNAディファレンシャルディスプレー法を用いて、いくつかの候補遺伝子が単離されたが、エンハンサートラップ系統からの遺伝子の単離は現在でも進行中である。これは、上記のように、エンハンサー活性の制御機構の解析を新たに行っていたためであり、平成8年度には、遺伝子の単離、機能解析まで行うことができると考えている。
|