我々は、精子形成の各分化段階の精細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体を作成し、これらを用いてマウス精巣cDNAライブラリーより抗原遺伝子のcDNAを単離した。これらのうち、calmeginは611個のアミノ酸をコードし、calreticulinと高い相同性を有し、Ca結合能を示した。次に、ゲノムライブラリーより5'上流領域をクローニングし、その塩基配列ならびに転写活性能を解析した。その結果、転写開始点より約200bp上流域に精巣特異的な転写活性を認め、ここにはGC Boxを含みGC塩基の割合が非常に高かった。また、この領域に結合する因子をゲルシフト法によって調べたところ、精細胞核抽出液に数本の特異的なシフトバンドが検出された。さらにゲノム遺伝子をターゲッティングベクターの導入し、ES細胞でのホモロガスリコンビネーション株を数個得た。現在これらのES細胞株を用いてキメラマウスの作成を試みている。 また、精細胞特異的なポリクローナル抗体も作成し、Western法で抗原分子を解析したところ、各分化段階特異的に発現のみられる抗原分子が10種類以上同定された。発現ライブラリーを用いて抗原遺伝子を単離したところ、11種類得られ、うち6個が新規の遺伝子であり、5個が既知の遺伝子との相同性を示した。Northen法で解析したところ、精巣特異的な発現が確認された。これらのうちGAG12はラットSSeCKS(癌抑制遺伝子)と高い相同性があり、減数分裂期に発現が見られる事から、生殖細胞の細胞周期との関連が示唆された。GAG5はラットSCP-1と相同性が見られ、減数分裂時の相同染色体の対合に関与すると思われる。そこでヒト精巣ライブラリーよりhSCP-1を単離し、塩基配列を決定した。
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