研究概要 |
我々は、MHCクラスIII領域に新規の細胞外マトリックスであるテネイシンX(TNX)遺伝子をヒトとマウスにおいて同定して以来、TNXの生体内機能の解析と分子進化学的研究を行ってきた。新規の細胞外マトリックスであるTNXは、全長約70kbの遺伝子にコードされ分子量約450kDaの巨大な多機能型タンパク質である。TNXの機能解析を行うにあたりTNX遺伝子の構造上の全情報を得ること、またマウスとヒト間の広範囲の連続したゲノム構造の差異を明らかにするため、全長67,977bpに及ぶマウスTNX遺伝子座の全塩基配列の決定を行った。さらにcDNAライブラリーのスクリーニングやRT-PCRによりマウスTNX遺伝子の全領域をカバーするcDNAクローンを得、解析を行った。その結果マウスTNXは4,114アミノ酸残基より成り立ち、数種のオルタナティブスプライシング産物の存在が判明した。またオルタナティブスプライシング産物は第3番目、及び15から22番目のフィブロネクチンタイプIIIリピートが、正確にスプライス・アウトしていることが明らかとなった。 またマウスとヒトのTNX遺伝子座の構造を比較するため、ドットマトリックス解析を行った。その結果イントロン1,4,6にマウスとヒト間で高く保存されている領域が見つかった。発生分化などの複雑な生物現象に関与する多くの遺伝子は、多様な発現制御を受けていることが考えられ、そのような遺伝子では非コーディング領域内に転写や複製の調節、核内配置などの重要な機能を司っている部位の存在が指摘されている。TNX遺伝子においてもヒトとマウス間で保存されている非コーディング領域は、TNX遺伝子の複雑な発現調節を担っている重要な領域である可能性が推測される。
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