研究課題
一般研究(C)
本年度は、ニワトリ胚およびラット胎児を用いて、metencepahlon(後脳)におけるオリゴデンドロサイト(OL)の正常発生を明らかにした。単クローン抗体O4(幼弱のOLのマーカー)を用いたニワトリ後脳の免疫組織学的染色において、O4陽性細胞はふ卵5日目(E5)より出現した。最も初期の陽性細胞は、第4脳室下面で底板に隣接する胚芽層に限局しており、フォーカスを形成していた。陽性細胞はその後、胚芽層のみならず、脳幹実質内にもみられるようになった。E6には脳幹の内側部に多く外側部にわずかにみられ、E7には小脳にもわずかのO4陽性細胞が出現するようになり、内側から外側、および腹側から背側方向への規則性をもった広がりが認められた。脳室底面のフォーカスはE7まで認められた。陽性細胞は、E5-6の脳幹やE7の小脳にみられるものでは、50-100ミクロンの短い突起をもつ単極型であり、この時期を過ぎると、短く細い突起を数本もつ多極型となった。単極型の細胞は、これまで報告されている、移動中の幼弱な神経細胞の形態に似ていた。小脳原基にOL、もしくはその幼弱細胞が存在するかどうかを、組織片培養にて調べた。その結果、ニワトリ胚では、E6由来の培養小脳組織からはOLは出現せず、E7以降のものより出現した。この発達パターンは、免疫組織学による形態学的な所見(上述)と一致した。さらに、ラットの胎児を用いて、後脳の発達にともなうOLの出現とその広がりを、同様に組織片培養で調べた。ラット胎児の後脳組織を、脳幹内側部、同外側部および小脳原基とに分け、各々の組織片を別々に10日程度培養した。その結果、ラットの後脳では、幼弱なオリゴデンドロサイトは、脳幹内側部ではE13までに、外側部ではE15に、また小脳原基では、E16に出現することが明らかとなり、ニワトリ胚と同様に、その発達に明瞭な内側-外側方向への広がりを示唆された。これまでの実験で明らかにされた結果より、後脳の最も初期のOLは脳幹の胚芽層内側部から出現し、外側および背側方向へ移動することが、強く示唆された。(以上の結果は、Gliaに投稿中)。
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