研究分担者 |
牧岡 朝夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (90119850)
渡部 和彦 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (30240477)
南谷 幹之 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (00229775)
福田 隆浩 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60228913)
松島 宏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70190460)
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研究概要 |
[目的]トキソプラズマ胎内感染による胎仔脳の病変は大脳皮質の低形成である。この病理機序にアポトーシスの関与が考えられる。今年度は胎齢10〜14日の胎仔脳についてTUNEL法を施行した。 [材料と方法]妊娠5日の親マウス(C57BL/6CrSlc)17頭にトキソプラズマ(ME49株)のシストを腹腔内に接種して得られた胎齢10,12,14,16および18日の胎仔脳についてTUNEL法を行い,前頭葉の前額面における陽性細胞数を算出し,その時間的変化を対照群と比較した。 [結果]胎仔脳においてTUNEl陽性細胞は脳室上衣下層から中間層に観察され,その数は対照群で胎齢10日1.67±1.00(n=9),12日1.88±0.99(n=8),14日1.83±1.17(n=6),16日1.44±1.75(n=16),18日1.56±1.32(n=16)であった。一方,実験群では上衣下層が菲薄で,中間層との区分も不明瞭であり,陽性細胞はランダムに分布した。陽性細胞数は,それぞれ3.63±3.70(n=8),3.50±1.76(n=6),3.08±2.11(n=12),2.18±2.40(n=11),1.00±1.71(n=16)であり,かなりの個体差がみられた。t検定では12日を除いて有意性が低かった(p<0.05)。 [考察と結論]胎生初期にあたる胎齢5日にトキソプラズマに感染した胎仔脳は原虫による直接破壊あるいは親マウスの胎盤炎による循環障害をきたすと推察される。その結果,胎齢10〜16日にアポトーシス細胞が増加し,18日では減少する傾向を示した。この事実は,正常発育では将来アポトーシスに進むべき細胞がトキソプラズマ感染によってアポトーシスを先行し,大脳皮質の低形成を引き起こす可能性を示唆している。
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