研究概要 |
パーキンソン病は黒質線条件系ドーパミンニューロンの変性に起因している.パーキンソン病の有効な治療法としてドーパ療法がある.さらに,ドーパとともにB型モノアミン酸化酵素阻害剤を投与すると,ドーパの治療効果を増大させる.パーキンソン病において,ドーパおよびB型モノアミン酸化酵素阻害剤の作用機序は未だ不明である.本研究の目的は仮説「セロトニンニューロンはパーキンソン病ドーパ療法に関与する」を検証することである.我々は前年度において,ラットにドーパを投与すると,セロトニンニューロンがドーパミンをつくることを示した.今年度は,B型モノアミン酸化酵素阻害剤のドーパ療法における作用に関して研究を行い,以下の2点を明らかにした.1)ラット脳のセロトニンニューロンはB型モノアミン酸化酵素を持つ.2)ドーパだけを投与したラットと、ドーパとともにB型モノアミン酸化酵素阻害剤を投与したラットを比較すると,後者の方がセロトニンニューロンにつくられるドーパミンの量が多い.以上の結果から次の2点が示唆される.1)セロトニンニューロンにおいて外来性ドーパからつくられたドーパミンの一部は,B型モノアミン酸化酵素によって分解される.2)外来性ドーパからつくられたドーパミンのB型モノアミン酸化酵素による分解は,その阻害剤によって抑えられる.その結果,セロトニンニューロンにおけるドーパミンの量が増え,パーキンソン病ドーパ療法の治療効果を増大させる.
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