研究概要 |
脳内ヒスタミン神経系の生理機能は,他の神経系の神経終末上にプレシナプティックヘテロレセプターとして存在するH3-受容体を介してそれらの神経系の活動性が調節されて発現するという作業仮説を証明するため実験を行い,本年度は以下の成績を得た. 1.H3-受容体の遮断薬として広く用いられているチオペラミドが,実は,脳内の神経伝達機構に対して様々な作用をもつことを明らかに出来た.チオペラミドの投与実験からH3-受容体が関与している報告されている事実については,もう一度検討する必要がある. 2.脳微小透析法と多種目神経化学分析装置(ニューロケム)を用い,H3-受容体リガンドの脳内神経伝達物質動態への作用を検討し,セロトニン神経系の代謝回転が影響を受けることが明らかになった. 3.初代培養細胞を用いての実験に着手し,その基本的方法を確立した. 4.オランダ・アムステルダム自由大学・薬化学教室および大阪薬科大学・薬品製造学教室において合成された新規H3-受容体リガンドの薬理学的プロフィールを調べ,より特異性と親和性の高い化合物を検索している. 5.麻酔深度の調節や動揺病予防へのH3-リガンドの応用を試み,予備実験では有望な結果を得ることが出来た.
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