H3受容体の遮断薬として最も一般的に用いられている薬物であるチオペラミドがGABA遊離促進作用を持つことを見出したので、この機構の解析を中心に研究を行った。H3受容体遮断薬チオペラミドの投与によりGABA遊離が約200%に増加した。このときヒスタミンの遊離は170%に増加した。このことから ラット視床下部GABA遊離はヒスタミンH3受容体により緊張性に抑制されていることが考えられた。そこで、α-FMH投与により神経性のヒスタミンを涸渇した状態で先と同様の実験を行ったところ、GABAの基礎遊離に変化はなくα-FMHを投与しなかったものと同様にチオペラミドによるGABA遊離の増加が見られた。この結果はチオペラミドのGABA遊離増加作用はH3受容体の遮断によるものではないことを示している。そこで、次にH3受容体作動薬イメピップの作用を調べたところヒスタミン遊離は基礎遊離の約50%に減少したがGABA遊離には変化が見られなかった。またチオペラミド投与の後イメピップを同時投与してもチオペラミドによるGABAの遊離増加作用に影響が見られないが、チオペラミドによるヒスタミン遊離の増加は完全に抑えられた。さらに、より特異的なH3受容体遮断薬であるクロベンプロピットの作用を調べたところ、ヒスタミン遊離は基礎遊離の約2倍に増加したがGABA遊離には変化がなかった。クロベンプロピツトにGABA遊離増加作用が見られず、またH3受容体遮断薬イメピップもGABA遊離に影響しなかったことから、H3受容体遮断薬チオペラミドによるGABA遊離増加作用はH3受容体を介した作用ではないと結論した。次に灌流液からCa^<2+>を除去するとヒスタミン遊離は基礎遊離の約45%に減少するがGABA遊離には有意な変化は見られなかった。続いてチオペラミドを投与すると、ヒスタミン遊離には変化が見られなかったのに対しGABA遊離は有意に増加した。つまり、チオペラミドによるGABA遊離の増加は細胞外Ca^<2+>に非依存性であることから、GABAトランスポーターの作用の抑制または逆転を引き起こして細胞外液中のGABA濃度の増加を引き起こしていると考えた。
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