研究概要 |
肝細胞から分泌される因子が老化した末梢神経の神経再生を促進するだけでなく、成熟動物の中枢の神経組織からの神経再生をも促進することを明らかにしてきた。本研究は:(1)肝細胞分泌神経再生促進因子の分離・精製を更に進め、この因子を単離しそのアミノ酸シークエンスを決定すること、(2)この因子の末梢神経系に対する作用機序を明らかにすること、を目的として行ってきた。その結果: 1.肝細胞培養上清の分離精製 1994年に培養上清500L集め分離精製を行いアミノ酸シークエンスの部分的決定に成功し、この因子が新規であることがほぼ確実になった(特許の関係で詳細報告は割愛)。今年度はまず1000Lの培養上清を集めることに専念し、目的の量を集めることが出来た。現在その上清中から肝由来神経活性化因子を分離精製する方法を前回の方法を元に検討中である。来年度中に因子のアミノ酸シークエンスを決定し、遺伝子クローニングを確立する基盤を作り上げることが出来た。 2.肝細胞分泌因子による末梢神経神経再生促進・生存維持機構の解明 肝由来神経活性因子は神経細胞には直接作用せず、神経を取り巻く細胞系に作用視神経再生を促進しその生存維持を可能にしている。そこで神経線維を伴う後根神経節のおけるNGF,BDNF,NT-3,NT-4の神経栄養因子のmRNAの発現レベルの変化をcompetitive PCR法で測定した。まだプレリミナリーな段階であるが、肝由来因子によりこれらneurotrophinの発現が活性化されることはなさそうである。別の機構を活性化することにより神経再生促進し、生存維持機能を発現するものと考えられる。Iaminin等の細胞外マトリックスの発現変化などに注目していきたい。
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