肝細胞から分泌される因子が老化した末梢神経の神経再生を促進するだけでなく、成熟動物の中枢の神経組織からの神経再生をも促進することを明らかにしてきた。本研究は:(1)肝細胞分泌神経再生促進因子の分離・精製を更に進め、この因子を単離しそのアミノ酸シークエンスを決定すること、(2)この因子の末梢神経系に対する作用機序を明らかにすること、を目的として行ってきた。その結果: 1.肝細胞培養上清の分離精製: 今年度は昨年度より集めた1000Lの肝細胞培養上清中から肝由来神経活性化因子を分離精製する方法を前回の方法を元に検討し、分離精製を進めているところである。分離は順調に進められており、精製された活性化因子から因子のアミノ酸シークエンスを決定し、遺伝子クローニングを確立することが出来る予定である。現在活性化因子の収量を算出しており、その量がアミノ酸シークエンスを決定できる量に達すれば、因子を特定し遺伝子クローニングを行う計画である。(企業との共同研究のため、詳細な記載は省略) 2.肝細胞分泌因子による抹消神経神経再生促進・生存維持機構の解明: 肝由来神経活性因子は成熟したマウスやラットの神経線維束を伴う脊髄後根神経節の線維束切断端からの神経再生を促進した。今年度この因子の下神経節を含む迷走神経線維束の線維束切断端ならびに、上頚神経節を含む線維束切断端からの神経再生に対する効果を検討した。その結果肝由来神経活性化因子は迷走神経線維束切断端、ならびに交感神経線維束切断端からの神経再生を促進することが明らかになった。 今後肝由来神経活性化因子の臨床的用に向けこの因子の同定、遺伝子クローニングと同時にその作用機序を更に解明していく予定である。
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