肝細胞から分泌される因子が老化した末梢神経だけでなく成熟動物の中枢の神経組織からの神経再生をも促進することを明らかにしてきた。本研究は:(1)肝細胞分泌神経再生促進因子の分離・精製を更に進め、この因子を単離しそのアミノ酸シークエンスを決定すること、(2)この因子の末梢神経系に対する作用機序を明らかにすること、を目的として行ってきた。その結果: 1.肝細胞培養上清の分離精製: 平成7年度に集めた1000Lの肝細胞培養上清中から肝由来新経活性化因子をすでに確立した分離精製方法を導入しし、分離精製を進めているところである。分離は順調に進められており、精製された活性化因子から因子のアミノ酸シークエンスを決定し、遺伝子クローニングを確立する予定である。(企業との共同研究のため、詳細な記載は省略) 2.肝細胞分泌因子による末梢神経神経再生促進・生存維持機構の解明: 肝由来神経活性因子は成熟したマウスやラットの神経線維束を伴う脊髄後根神経節の線維束切断端からの神経再生を促進した。この因子の下神経節を含む迷走神経線維束の線維束切断端ならびに、上頸神経節を含む線維束切断端からの神経再生に対する効果を検討した。その結果肝由来神経活性化因子は迷走神経線維束切断端、ならびに交感神経線維束切断端からの神経再生を促進することが明らかになった。また因子は神経節内の神経細胞の培養後の細胞死を抑制する効果のあることも明らかとなった。 今後肝由来神経活性化因子の臨床的用に向けこの因子の同定、遺伝子クローニングと同時にその作用機序を更に解明していく予定である。
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