研究概要 |
IkB様分子およびNF-kB様分子のラット脳内の局在を光学顕微鏡および電子顕微鏡レベルで調べ,特に両分子がシナプス後肥厚部(Postsynaptic Density, PSD)に存在することを明らかにした.また,Western blottingによる検索では,脳全体では両分子とも従来報告されていたものとは異なった分子量のものが複数個存座していることが明らかになった.IkB様タンパク質としては PSD画分には唯一,分子量63,000のもののみが存在しており,かつこのタンパク質は調べた限りの細胞下分画では唯一,PSD画分にのみ存在していた.従って電顕を用いた免疫組織学的検索で示されたIkB様活性のPSD内局在は,この分子量63,000のタンパク質である可能性が高いと考えられた.そこでこのタンパク質をPSD-63と名付けた.さらに,PSD画分に存在する分子量63,000のタンパク質を集め,蛋白質分解酵素で複数のフラグメントを得た後にそれらのアミノ酸配列を求めたところ,8個のα-internexin内在配列を得た.そこで,α-internexinに対する抗体を得てPSD-63とα-internexinとの異同を検討した.まず2次元電気泳動では両者は等電点を弱酸性領域に持つ同一スポットに泳動された.しかしPSD-63がPSD画分にのみ存在する(前述)のに対して,α-internexinは他にミエリン,シナプス膜画分,シナプトソーム画分,P_1画分などにも存在しており両者の分布には大きな違いが認められた.このことから二つの可能性が考えられた。一つはPSDにはPSD特異的な配列を持つα-internexinが局在している可能性.もう一つはPSDにはα-internexinに加え,それとは全く異なるPSD-63分子が同時に存在する可能性である.申請者らは2次元電気泳動の結果から前者の可能性が高いと考えて,引き続きさらに検討を加えてゆく計画である. またこれらの実験とは独立して,PSDタンパク質で,シナプスから核へシグナルを運搬する分子について抗体による検索を始めた.
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