研究概要 |
ラット中枢神経系のシナプス後肥厚部(postsynpatic density,PSD)を構築する分子のうち,未発見・未同定の分子の検索を行った. 1.検索の対象となったのものの一つとして,特にシナプスから核へシナプス情報を伝達するのに関わっている分子(MSNs,Messengers from synpase to the nucleus,Neurosci. Res,25 : 1-6,1996参照)について調べた.MSN候補分子として前述の総説でNF-κB,Heat shock protein (HSP),種々の転写因子,シグナル伝達系の数種のタンパク質キナーゼなどを挙げたが,それらのいくつかについて調べた. (1)PSDにNF-κBとそのアンカー分子であるl-κBの両者が存在する事を明らかにした.特にl-κB様分子については抗体を用いて大脳からcDNAのクローニングを行っている.現在までに抗l-κB抗体に反応する2種のcDNAを得ているので,引き続きクローニングを継続し,coding regionの全塩基配列を決定する計画である. (2)CREBの大部分は該内に局在するが,ごく微量ではあるが,神経細胞の樹状突起先端部までも存在することを明らかにした.この部のCREBは細胞骨格成分に結合しており,カルモジュリンキナーゼによるリン酸化を受けると,細胞骨格から遊離されることを明らかにした. (3)HSP70が神経細胞の樹状突起,PSDにも存在することを明らかにした.この部のHSPが神経活動に応じてどのように変化するのかを解析する計画である. (4)MAP kinase : MAPキナーゼとともにその基質であるRSKもPSDに局在するらしいことを明らかにした.これらがともに核に移行するのかどうかについて明らかにする計画である. 2.これらの他にも未発見の構築分子の探索を行った.PSD特異的抗体を作成し,ラット大脳mRNAから調製したcDNAライブラリーから,反応する遺伝子のクローニングを開始した.現在のところ,一つの未知クローンが得られたので,引き続きクローニング作業を続けcoding領域の全長の遺伝子配列を明らかにする事を目指している.
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