研究概要 |
スナネズミに5分の虚血負荷を与える海馬CAl錐体細胞の遅発性細胞死がおこるが、あらかじめ2分の虚血負荷後を加えておくと5分の虚血負荷による遅発性細胞死が著しく軽減される。我々は2分虚血負荷後の海馬CAl錯体細胞層でアポトーシス抑制遺伝子bc1-2蛋白の特異的発現増加を94年に発表したが(Shimazaki et al.Neurosci.Res.20,95-99)、本研究ではさらに様々な条件での虚血負荷を行い、スナネズミ海馬における虚血耐性獲得とbc1-2発現変化を蛋白とmRNAから検討して以下の研究成果を得た(11・研究発表参照)。 研究成果の概要 免疫組織化学的実験から、虚血耐性を示すことが知られている2分虚血負荷2日後の海馬ではCAlに特異的にBc1-2の発現増加が認められた。一方、虚血耐性の見られない1分と5分の虚血負荷スナネズミでは同時期の海馬ではBc1-2の発現増加は認められなかった。このことは、Bc1-2蛋白発現増加と遅発性細胞死抑制との間の強い相関を示唆する。 しかし、リボヌクレアーゼ・プロテクション・アッセイでmRNAを調べると虚血負荷5分後1日の海馬にも発現増加が認められた。さらに、2分虚血負荷海馬のin situハイブリダイゼーション実験ではmRNA発現増加は海馬全体に見られた。 以上のことより、(1)虚血負荷後のbc1-2mRNA発現増加は2分以上で起こるが、5分の虚血負荷では遅発性細胞死が先行する。このため、虚血耐性の関わると思われるBc1-2蛋白発現増加は2分虚血負荷特異的となる。(2)2分虚血負荷海馬でのbc1-2発現増部位が蛋白とmRNAで異なるのは、蛋白への翻訳段階でも調整がある事が示唆された。
|