研究概要 |
末梢神経系の有髄神経におけるミエリン形成の様式は中枢神経系とはまったく異なっており、一つのシュワン細胞が、一つの神経軸索に対してミエリン形成する。その直前に、シュワン細胞が過不足なく神経軸索に接着し増殖を停止する。この過程におけるシュワン細胞の数の調節のメカニズムの解析を試み、以下の結果を得た。 1,発育過程のラット坐骨神経で実際にシュワン細胞にアポトーシスが誘導されている像が観察され、しかもそのピークは生後3日目にみられた。以上のことよりアポトーシスがシュワン細胞の数の調節メカニズムに関与している可能性が示唆された。 2,増殖期(生後0-1日目)のシュワン細胞を坐骨神経から採取し、immunopanning法で培養すると、50%以上のシュワン細胞にアポトーシスが誘導されることが観察された。この結果は、シュワン細胞の生存が神経軸索への接着に依存しているためであると考えられた。 3,この生存維持の軸索依存性は、増殖停止期のシュワン細胞では著明に低下していった。 4,シュワン細胞の生存はpoly-L-lysineやフィブロネクチンなどの接着を増強するような基質を培養皿にコートすることによって著明に促進した。 以上の結果より、シュワン細胞の生存維持は細胞接着因子を介した神経軸索との強固な接着が重要であり、増殖しているシュワン細胞のうち軸索に接着できないものが選択的にアポトーシスをおこしていくことで最終的に神経軸索にちょうど対応する数になる可能性が示唆された。
|