研究概要 |
本研究は海馬体における学習・記憶の情報処理様式に対する長期増強(LTP)および長期抑圧(LTD)の行動神経生理学的機序の一端を明らかにする目的で行なわれた。8年度は研究計画に従い場所ニューロンとLTP、行動および誘発電位との相関が調べられた。ランダムな運動課題を訓練したラットの海馬体CA1から単一ニューロン活動を記録し、場所フィールドを同定した。ついでSchaffer側枝を一回刺激(100Hz,100発)した.誘発電位は約30分間抑制された後増強した。抑制期間中場所フィールドは不安定で一定していなく行動も壁の周りを旋回する定型行動を示した。一方、Schaffer側枝の低頻度刺激(1Hz,100発)では誘発電位は抑制された。また自発放電頻度も抑制され場所フィールドは決まらなかった。これは人工的な電気刺激によって海馬体CA1ニューロンのシナプス情報伝達効率が変化し情報伝達が阻害された結果、行動異常や場所フィールドの変化が起こったと考えられる。これらの結果は1996年米国および日本神経科学学会で発表された。しかし、研究を通して高頻度刺激と海馬体における発作の関係が強く指摘された。9年度はこの点を注意深く進めるとともに、8年度の研究を続行し例数を集め、LTP、LTDとニューロン活動、行動の関係を計画に従い詳細に研究していく予定である。
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