研究概要 |
本研究の目的は,網膜の神経節細胞の情報処理特性を,細胞内電位記録実験とその結果に基づいて構築した数理モデルによる理論解析の両面から明らかにすることである.今年度は,上記実験のための実験環境の整備に予想以上の時間が割かれた.これは当初計画どおりのDRTモニタを光刺激源とした実験装置に加え,神経節細胞の形態と光応答を容易に対応させることが可能なデータ収集のために,顕微鏡下で赤外線カメラにより網膜をモニタしながら細胞内記録ができる装置を組立てているためである.後者の装置は,発光ダイオードを光刺激源とし細胞の受容野をより詳細に調べることが可能である.両方の装置からの知見をあわせて,今後神経節細胞の形態まで考慮にいれた等価電気回路網モデルを構築し解析を進めていく予定である.現在までで得られた結果を以下に箇条書にする. 1.神経節細胞に入力する双極細胞の光応答を記述する並列抵抗回路網モデルを構築し,双極細胞の空間特性が初期視覚の標準正則化問題による記述に対応させて考えることができることを示した. 2.神経節細胞に入力するアマクリン細胞の動く光刺激にたいする応答を測定した. 3.顕微鏡下におかれた網膜および網膜スライス標本から,細胞内記録法により網膜神経細胞から光応答を記録することができた.また赤外線カメラを用いて,網膜神経節細胞とおもわれる細胞が観察できることを確認した.
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