本研究の目的は、網膜神経回路網の機能を生理学的および計算論的視点から明らかにすることである。本研究において以下のような結果を得た。 1。外網膜神経回路網を線形アナログネットワークモデルにより表現した。 2。モデルを用いて、外網膜神経回路の空間特性を標準正則化理論により定式化した。すなわち、外網膜神経回路の機能を、評価関数の最小化問題として解釈できた。 3。アマクリン細胞の光応答特性を調べる目的で、光刺激装置を製作した。この光装置を用いてアマクリン細胞の光応答を細胞内記録方により得た。次に、この光応答からアマクリン細胞の受容野の広がりと形態との対応を調べた。結果は、アマクリン細胞の樹状突起の広がりの方向に受容野が偏平している可能性を示していた。 4。水平細胞におけるCa^<2+>制御機構を調べる目的で、細胞内Ca^<2+>濃度を蛍光色素fura-2を用いて計測した。 5。Ca^<2+>の流入経路として、電位依存性Ca^<2+>チャネルとグルタミン酸依存性チャネルが存在することが分かった。 6。Na^+-Ca^<2+>交換機構とCa^<2+>-ATPポンプがCa^<2+>を排出していることが分かった。 7。結果5および6は、Ca^<2+>排出機構も、水平細胞の光応答形成に重要な働きがあることを示唆している。現在この点を明らかにするために、計算論による解析が進められている。
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