研究概要 |
本研究は上部頸髄呼吸性ニューロンによって構成される機能的神経回路の形態学的裏付けを行うことを目的としている.そのため,本年度はまず細胞体電位記録により上部頸髄呼吸性ニューロンの同定を行った.次に,同定された上部頸髄呼吸性ニューロンにHRPまたはNeurobiotinを電気泳動性による注入を試みた. 1.実験動物としてペントバルビタールで麻酔したネコを用い,急性実験で上部頸髄(C1-C2)からガラス微小電極を用い細胞内記録を行った.この際、同側の横隔膜運動ニューロンのあるC4-5髄節の逆行性刺激により下行性軸索を持つ呼吸性ニューロンかどうかを同定した.搏動性の動きによるアーチファクトがあり,安定した記録がやや困難であったが,約20個の上部頸髄呼吸性ニューロンの同定に成功した.膜電位は-75〜-50(平均-62)mVであった. 2.安定して記録されたニューロンにつき,HRPおよびNeurobiotinの注入を試みた.現在までに6個のニューロンにつき注入に成功した.注入後,動物を灌流同定し凍結切片を作製し,発色処理をした切片を光顕で観察した.細胞体は直径約20-30μmであり多極性細胞の特徴を持ち,前側索を下行する軸索を有していた.細胞は灰白質中間帯外側部に位置していた. これらの実験成果をふまえ次年度はさらに観察例を増やし,画像解析システムを用いて3次元形態を明らかにしたい.
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