本研究の目的は(1)鳴鳥のジュウシマツやキンカチョウを材料として発声中枢系の各核の役割と歌形成(学習)の仕組みについて明らかにすること(2)ニホンウズラの地鳴き(本能)の中枢を明らかにすることを目的とする。方法として歌や地鳴きを音響学的に解析しながら、各中枢の神経核の機能と形態を神経行動学的に解析する。 平成7年、8年度と二年間に渡る研究目的の(1)と(2)についての研究成果について述べる。鳴鳥(ジュウシマツ)はHVc核、RA核の機能に依存して歌を歌う。これら核間の神経回路の形成が歌の形成と関係する。歌の形成後は聴覚系からの入力によるフィードバックを必要としないと言われてきた。本研究では歌発声の中枢の制御機能を見た。歌の完成したジュウシマツ成鳥の雄の両鍋牛管破壊によって聴覚系入力を遮断すると、1週間後歌は完全に変化することが音響学的に分かった。それは成鳥が歌完成後も常に歌を保持するために自分で発声した歌の音声フィードバックを使うことを明らかにしたことである。その際、歌の構造の中で、フィードバックに使っているシラブルと使っていないシラブルがあることが分かった。それは両耳からの音声入力を遮断すると、基本周波数の高いのとFM変調の大きいシラブルは使わず基本周波数の低いのとFM変調の小さいシラブルを使っていることである。術後10週間でジュウシマツは低周波とFM変調の小さいシルブルで作られた歌を固定させて歌うことが明らかになった。本能であるウズラの地鳴きの中枢は中脳のICo核(Dorso-medial area(DMA))であることを明らかにした。このICo核はヒナにおいて外部からのテストステロン処理によって働きが変化した。それは地鳴きのdistress callから幼鳥特有のcrowの発声になることである。このことから成鳥の雄叫びの中枢は幼鳥の地鳴きのICo核と同じであると思われる。
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