研究概要 |
延髄腹外側部の呼吸性ニューロンは,高閾値(N,L型),中間閾値(P型)及び低閾値(T型)のCa^<2+>チャネルを持つ.本研究では,新生ラット摘出脳幹一脊髄標本を用い,Pre-I及び吸息性ニューロンについて,バースト形成に重要と思われる高閾値及び中間閾値Ca^<2+>チャネル,Ca^<2+>依存性K^+チャネル,そして内因性の膜電位振動形成に関与する持続性Na^+チャネルを,パッチクランプ法を用いて解析した.結果:1)P型Ca^<2+>チャネルブロッカーであるω-Aga-IVA(0.2μM)の投与により,バーストの大きさは減衰した.2)N型Ca^<2+>チャネルブロッカーであるω-CgTX(2μM)処理によって,バーストの大きさは増大し,活動電位の不活性化が見られた.またCa^<2+>依存性K^+チャネルの間接的な抑制により,スパイク後過分極を抑制した.3)Ca^<2+>依存性K^+チャネルブロッカーapamin(0.4-1μM)の投与は,バーストの増大,活動電位の不活性化を引き起こした.4)L型Ca^<2+>チャネルブロッカーであるnifedipine(20μM)は,バーストの持続時間を短縮させた.5)Cd^<2+>(0.1mM)によりCa^<2+>チャネルをブロックした時,バースト活動の抑制後,Pre-Iニューロンにおいては緩徐脱分極応答及び脱分極依存性の膜電位振動が観察された.その活性化の閾値は-45mV付近にあった.さらにK^+チャネルブロック下で,自発性のバースト活動及びプラトー電位を発生した.これらの反応は,すべて0.5μM TTXによりブロックされた.考察:Pre-IニューロンにおけるTTX感受性-持続性Na^+チャネルとP型Ca^<2+>チャネルの働きによる内因性緩徐脱分極がバーストの立ち上がりに重要である.続いてN,L型Ca^<2+>チャネルが活性化されバーストが増強される.Ca^<2+>依存性K^+チャネルはバーストの持続と終了に関与するものと考えられる.結論:一連の研究によって、延髄腹外側部呼吸性ニューロンが持つ,イオンチャネルが明らかにされ,それぞれのバースト形成における機能が示唆された.
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