脊椎動物網膜水平細胞から視細胞への抑制性シナプスは、中心-周辺拮抗的受容野の周辺部応答形成及び三原色説過程から反対色説過程への色覚変換に関与する重要なシナプスである。水平細胞は、γ-アミノ酪酸(GABA)を神経伝達物質放出している。最近、水平細胞自身にGABA感受性のあることが報告されたが、その機能については不明である。今年度は水平細胞のGABA感受性を検討するため、アメリカナマズ(Ictalunus punctatus)網膜から単離した水平細胞を電圧固定し、(GABA)によって惹起される電流応答の生理学的及び薬理学的性質を解析した。 生理学的解析:水平細胞のGABA電流応答は脱感作を殆ど示さなかった。この電流は、塩素イオン(Cl^- )によって運ばれる。用量-応答曲線から求めたEC_<50>は約2μMであり、HIII係数は約2であった。ノイズ解析から求めたシングルチャネルタンダクタンスは約7pSであった。GABA感受性は、水平細胞の表面に均一に分布していた。ガラス管微小電極法を適用して測定したGABA応答の逆転電位は、約-30mVであった。 薬理学的解析:GABA_Aレセプターアゴニストのmuscimolやアンタゴニストのbicucullineとpicrotoxin、またモデュレーターのpentobarbital及びdiazepamは全く効かなかった。GABA_Bレセプターアゴニストのbaclofen、アンタゴニストのCGP35348も無効であった。cis-4-aminocrotoronic acid (CACA)やtrans-4-aminocrotonic acid (TACA)は、GABAと同じ効果を有していた。 以上の実験結果から、水平細胞にはGABA_Cレセプターが存在すること、またこのレセプターの活性化によって水平細胞は脱分極することが明らかとなった。
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