研究概要 |
冷血脊椎動物コイ、カメの網膜2次ニューロンである水平細胞内に蛍光色素Lucifer yellow CHを薬物と共に注入し、隣接水平細胞への色素の拡散状態を観察することによりギャップ結合調節機構の解析を行った。 1.cGMPと共にprotein kinase G阻害剤を注入したところ色素拡散(dye-coupling)はみられなかったが、cAMPと共にprotein kinase A阻害剤の注入を行ったところ著明なdye-couplingがみられた。 2.cAMPと共にprotein kinase A阻害剤を注入した時はdye-couplingはみられなかったが、cGMPとprotein kinase G阻害剤の同時注入では著明なdye-couplingがみられた。 3.以上の結果からcAMPとcGMPはそれぞれprotein kinase A,protein kinase Gを介してギャップ結合を遮断していること、またcAMPとcGMPはそれぞれ独立してギャップ結合を遮断していることが明らかになった。 4.一酸化窒素(NO)の前駆体であるL-アルギニンと共にprotein kinase G阻害剤を注入したところ、dye-couplingがみられ、アルギニンのギャップ結合遮断作用がprotein kinase G阻害剤で抑制された。この結果から、NOによるギャップ結合遮断がcGMP、protein kinase Gを介していることが明らかになった。 5.アラキドン酸と共にprotein kinase G阻害剤を注入すると、dye-couplingがみられた。Protein kinase Aおよびprotein kinase Gを共に阻害する阻害剤(A3)をアラキドン酸と同時に注入すると、protein kinase Gのみの阻害剤の注入よりも広範囲に及ぶ著明なdye-couplingがみられた。この結果から、アラキドン酸によるギャップ結合制御機構におけるcAMPとcGMP系のcross-talkが示唆された。
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