本研究は高レニン活性を伴った高血圧における動脈硬化病変の進展を解析することを目的とした。ヒトレニン遺伝子およびヒトアンギオテンシノーゲン遺伝子をあわせもつTsukuba hypertensive mice(THM)は高レニン型の高血圧を発症する。そこで、このTHMとレニン活性が正常であるC57BL/6Jにおいて、高コレステロール・高脂肪からなる動脈硬化食を摂取させた際に生じる動脈硬化病変を比較検討した。 2-3月齢のTHMおよびC57BL/6Jに動脈硬化食および通常食を14週間摂取させた。通常食群において、THMの収縮期血圧はC57BL/6Jの血圧より有意に高かった。しかしながら、THMおよびC57BL/6Jの両系統において、動脈硬化食を摂取させても、血圧は通常食群の値と変わらなかった。また、血漿中の総コレステロール量およびリポタンパクコレステロール分画を測定したところ、各々の食事群においては系統間に有意な違いは認められなかった。しかしながら、両系統における動脈硬化食群の総コレステロール量は、通常食群の約3倍の値を示し、その高コレステロール血症はnon-HDL分画の増加に起因していた。動脈硬化食を摂取させた群において、主要な血管の組織学的解析を行った。動脈硬化病変は、両系統において大動脈基部にのみ観察された。しかしながら、THMとC57BL/6Jを比較したところ、THMでは進展した病変が広範囲に認められた。この病変面積を測定したところ、THMではC57BL/6Jの約4倍、病巣が広がっていることが示された。 これらのことから、高レニン活性型高血圧は動脈硬化を進展させることが明らかとなった。またTHMは、動脈硬化の病態を解明するためのよいモデルであることが示された。
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