研究概要 |
チャイニーズハムスター間葉型軟骨肉腫細胞(MCS-1,MCS-8)の転移実験モデルとしての有用性を検討し、以下の知見を得た。 1,近交系ヌードマウスにおける実験的肺転移病態をBALB/c系ヌードマウスを用いて観察した。MCS-1とMCS-8とを静脈内移植後21日目の転移率はそれぞれ100%と25%であり、35日目のそれは100%と60%であった。MCS-1移植21日目の転移結節数はMCS-8の約10倍であり35日目のそれは約5倍であった。これらの所見は非近交系のICR系ヌードマウスで得られた結果とほぼ同様の傾向を示し、マウスの遺伝的背景には影響されないことが示唆された。 2,MCS-8のヌードマウスあるいはチャイニーズハムスター(同種)皮下移植長期観察例に肺転移(自然転移)が観察された。この転移巣より得た培養細胞を両種に皮下移植し肺転移形成を観察した。これらの操作を繰り返すことにより現在、高自然転移株の作出を試みている。また、MCS-8の静注で稀にみられる肝転移巣より同様の方法で高肝転移株を作出したい。MCS-1の自然転移はこれまでのところ観察されていない。 3,MCS-1の実験的肺転移に影響を及ぼす増殖因子としてTGF-β_1が転移抑制的にはたらくことが示唆された。すなわちMCS-1をTGF-β_1添加培地で処理した後、ヌードマウスに静注したところ無処理群と比べて転移結節数が有意に少なかった。今後TGF-β_1が本腫瘍の転移抑制因子であるとすれば細胞分化との関連等、どのような機序によるものなのか検討したい。
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