研究概要 |
本研究によって得られた知見は以下のとおりである。 1.近交系ラット4系統(F344/DuCrj, LEW/Crj, BN/Crj, WKY/NCrj),クローズドコロ二一3系統(Crj:SD, Crj:Wistar, Crj:Donryu)の計7系統における日本産肺吸虫4種(ウエステルマン肺吸虫、ペルツ肺吸虫、宮崎肺吸虫、大平肺吸虫)の感染性は、各系統間に顕著な差を見出し得なかったものの、概して、BN/Crjは日本産の肺吸虫属4種に共通して高い虫体回収率を示すと共に、肺における高いシスト形成傾向を示し、肺吸虫感染実験系確立のための代替終宿主動物モデル侯補としての有用性が示唆された。 2.免疫抑制剤(プレドニゾロン)および免疫機能不全ラット(F344/NJcl-rnu)を用いた実験における日本産2〜3種肺吸虫(ウエステルマン肺吸虫、ベルツ肺吸虫、大平肺吸虫)の感染牲については、通滞の感染実験結果と比較して、虫体の発育、回収率、シスト形成傾向等に著しい違いは認められなかった。このことから肺吸虫の感染には少なくとも細胞性免疫の関与はないものと推量された。 3.食虫目の実験動物、スンクス(sunkus)における感染実験は、ウエステルマン肺吸虫とベルツ肺吸虫の2種を用いてその感染性を検討したが、虫体は全く回収されなかった。肺吸虫はイヌ、ネコなどの食肉目動物やラットなどのげっ歯目動物と異なり、食虫目動物には殆ど適応していないものと考えられる。 4.フェレット(ferret)における肺吸虫4種を用いた感染実験では、大平肺吸虫を除いては感染が成立しなかった。このことから、フェレットが日本産肺吸虫の好適な実験的終宿主となり得るとする報告があるが、これについては再度の検討が必要と思われる。
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