研究概要 |
この研究の目的は,メダカを材料としてトランスジェニック魚を作成するためのプロトコールを完成させることである.近年メダカやゼブラフィッシュを用いて,発生を調節する機能を持つ遺伝子の研究が盛んに行われており,遺伝子の機能を解析するために,胚性幹細胞を用いたトランスジェニック魚の作成法を確立することの必要性はますます高くなっている.この方法によるトランスジェニック魚の作成には,胚性幹細胞の培養,遺伝子移入,細胞移植によるキメラメダカの作成,という手順が必要である.このうち,本研究によって,細胞の移植法を確立し,再現性よく細胞移植を行えるようになった.また,胚由来の培養細胞に,数種のプラスミドを移入する実験を行い,移入のための条件を検討した.したがって,胚性幹細胞を培養すること以外は達成することができた.さらに,胚性幹細胞,分化の全能性を保ったままで培養することに主眼をおいて研究を進め,胞胚期の胚からの細胞の培養方法,培地の組成,フィーダー細胞の検討,などを行った.しかし,培養した細胞を移植しても奇形の胚を生じることが多く,全能性を持つ胚性幹細胞と呼べるような細胞を樹立するには至らなかった.最近,メダカやゼブラフィッシュを用いて同様の目的を持った研究が行われ,その結果が報告されているが,いずれも培養した胚性幹細胞によるトランスジェニック魚の作成には至っていない.しかし本研究によって,今後取り組むべき課題の焦点が明らかになってきた.それは,胚性幹細胞を増殖させるようなよいフィーダー細胞を分離培養すること,およびそのフィーダー細胞が産生する細胞増殖因子を同定することである.現在この研究を行っており,近い将来トランスジェニック魚の作成プロトコールが完成されることが十分期待できる段階になったといえる.
|