研究概要 |
平成7年度は、CD34遺伝子発現調節領域(D. Tenen et al. Blood 80: 3051-3059. 1992)がマウス個体内でも機能するか否かを確認するために以下の実験をおこなった。11kbの上記ゲノムDNAに0、9kbのヒトCD34cDNAを挿入したCD34ミニ遺伝子を構築した。この遺伝子をベクターより切り出し、抽出・精製し200-500コピー相当量をマウス受精卵前核に注入した。2回の実験より191個の受精卵が卵管内移植可能であった。この結果、24匹の仔マウスを得、尾よりDNAを抽出しサザンハイブリダイゼーション法により導入遺伝子の有無を確認したところ3匹でポジティブであった。現在までこれらの子孫をF1まで得ているが、導入遺伝子はメンデルの法則に従って伝達されることを確認した。これらF1マウスを用いて導入遺伝子の発現を検討した。脳、肺、心臓、胸腺、脾臓、肝臓、腎臓、大腸、卵巣あるいは精巣、骨髄の10臓器を採材しRNAと蛋白質を抽出した。ノザンハイブリダイゼーション法、イムノブロット、RT-PCR法により検討したが、発現は確認されなかった。CD34は造血幹細胞のマーカーであり、骨髄細胞の1%内外にしか発現していないことが知られているので、これらの方法では検出限界以下である可能性がある。今後は骨髄細胞を成熟細胞マーカー(CD3, B220, TER119, Grl, Mac1)で染色し、陰性の分画でヒトCD34の発現を検討する予定である。
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