研究概要 |
新たな乳癌高発・高転移モデル動物を作出する試みとしてのJygMMTV感染BALB/cマウスの系統維持は、現在F4〜F5世代に至っている。F1,F2世代における発癌率は80〜83%(平均発癌月齢12.0ケ月)、転移率65-68%(組織学的)であり、F3以降については経過観察中である。ただ、同じJygMMTV誘発乳癌でありながら、JYGマウスでの多臓器転移能とは異なり、BALB/cマウスにおいては転移臓器は肺のみであった。この転移臓器の違いがいかなる原因によるものかの解析が必要である。また、抗癌剤や転移抑制物質のスクリーニングとしてはより短期間の実験系が必要であり、これらマウス乳癌組織および肺転移巣から新たな細胞株の樹立を試みた。現在、5種類の細胞を培養し、それぞれについてBALB/cマウスへの生着性および転移能について検討しているが、より多くのprimary cultureを行い転移能の高いクローンの選択が必要である。また、同時に肺転移巣の乳癌組織片を移植針にて皮下移植し、in vivoでの移植継代を重ね、高転移クローンの選抜を行っている。まだほとんどの個体で肺転移巣を確認できるまでには至っていないが、転移頻度は高まってきている。この方法では移植後2〜3ケ月で肉眼的に転移が確認出来、転移抑制物質のスクリーニングとしても有用である。 さらに、マウス乳癌細胞株(JygMC(B))およびヒト乳癌細胞株(MDA-MB231)を用いて、その転移能をヌードマウスとSCIDマウスで比較検討し、転移を目的とした異種動物癌の移植宿主としてはSCIDマウスの方が有用であることを明らかにした。(乳癌基礎研究:5:52-56,1996) 一方、共同研究者の広石は、海洋生物資源から抗腫瘍活性物質を探索するためのin vitroでのassay系を確立し、乳癌細胞および卵巣癌細胞を用いて検討したところ、カニノテやヒトデの成分中に細胞増殖抑制活性を認めた。さらに担癌マウスでの検討を進めている。
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