昨年度までにすでに完成し、実用段階に達した齧歯類染色体のダイレクトR-バンディングFISH法を用いて、マウス、ラット、ハムスターの機能遺伝子の染色体マッピングを行った。この二年間にマッピングされた機能遺伝子の総数は、マウス、ラット、ハムスターでそれぞれ、121、70、46遺伝子であり、ダイレクトR-バンディングFISH法を用いることによって極めて迅速に染色体マッピングを行うことが出来た。マウスcDNAクローンを用いた異種間の染色体マッピング効率は、マウス-ラット間で98%以上、マウス-シリアンハムスター間で91%以上と非常に高く、マウスcDNAクローンがラット、ハムスター染色体へのFISHマッピングに非常に有用であることが判明した。本研究によって、未だ機能遺伝子の染色体地図が存在しないシリアンハムスターにおいて、マウス染色体との間に16の染色体相同領域が同定され、FISH法が実験動物の比較染色体地図の作製に非常に有用であることが示された。また、本研究でラット染色体上にマップされた機能遺伝子の数(70)は、1994年度までにマップされたラット遺伝子の総数169の約2.5分の1という迅速さであった。 さらに、新たに食虫類に属するスンクス(Suncus murinus)においてもダイレクトR-バンディングFISH法による高精度染色体マッピングシステムの確立を試みた。その結果、スンクスにおいても良好なreplicatio R-bandが得られ、ヒト、マウス、ラットのcDNAクローンを用いて、機能遺伝子を直接スンクス染色体にFISH法でマッピング出来たことから、今後は、この方法を用いて、スンクスにおいても機能遺伝子の染色体地図が迅速に作製されていくものと思われる。
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