研究概要 |
平成7年度は,鶏胚における心拍リズムゆらぎの発生過程,特に孵卵16〜18日における変化に着目して研究を実施した.その研究成果は以下の4点にまとめられる. (1)心電図は卵殻に微小な穴を開け,テフロン被覆白金線を刺入し,双極誘導によって記録した.この方法による心電図導出は,孵卵開始後10日程から可能であった. (2)鶏胚によって多少の差はあるものの,ほとんどの鶏胚において孵卵16〜18日から心拍リズムゆらぎスペクトルの大きな変化が認められた.16〜18日頃から低周波ゆらぎが増大し,低周波帯においてそれ以前は白色様であったゆらぎスペクトルが1/f様の特性を示した. (3)心拍ゆらぎの呼吸性変調成分(cardio-respiratory coupling)についても,孵卵16〜18日頃に顕著な変化が認められ,急激に増加する傾向が存在した. (4)生体リズムを形成するマクロ的実体を非線形自励振動子としてとられ,それらをBVP方程式としてモデル化した.複数の方程式のパラメータに対して,孵卵15日以前の鶏胚から得られたゆらぎを与え,それらで非線形相互結合させることによって、個々は白色様スペクトルであった振動子が全体としては1/f様のスペクトルに近づくことを明らかにできた.
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