脳に代表される生体の情報処理は、神経細胞とその回路網により担われている。神経細胞は閾値素子などでモデル化し、その動作解析については多くの研究がなされてきた。しかし、実際の回路網内における個々の神経細胞の役割や、細胞間での信号伝達の様子、刺激による学習の過程などについては未だ解明されていない。 本研究では、多数素子からなる微細電極アレイ上に大脳皮質細胞を培養して神経回路網を形成し、特定培養条件下で自発的に発生する活動電位や、外部刺激を一定規則で与えた場合の応答について、その空間的および時間的パ-タンを解析をする。これにより培養液の条件や刺激方法と神経興奮伝搬特性との関係を調べ、学習や記憶のメカニズムについて新たな知見を得ることを目的とする。このため、本年度は以下の点について研究した。 【微小電極基板の設計・製作】 大脳皮質等の神経細胞を培養するため微細電極の基板として、約8mm角の基板面に64組程度の電極を配置し、適切な電極サイズとパターンを設計した。これに基づき細胞を成長させる基板を作成した。 【刺激パターン生成および応答波形取り込みシステムの製作】 全電極から並列で応答波形を取り込むシステムを製作した。また、単一パルスやバースト波など刺激波形やその生起タイミングをプログラマブルに制御できる刺激装置を製作した。 これらの成果により、初年度の研究計画をほぼ達成されたと考える。
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