研究概要 |
医用エラストマーとして広く利用されているセグメント化ポリウレタン(SPU)の機械的特性を維持しつつ血液適合性を改善することを目的として,血液適合性に優れた2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)重合体を高分子添加材として複合化することを企画した.本年度はSPUとの親和性と共通溶媒への溶解性に着目した高分子添加材としての新しいMPC重合体の合成と,MPC重合体を添加したSPU複合膜の特性について検討する.SPUとしてTecoflex 60(TF)を用いた.MPC重合体は対応するモノマーを溶媒に溶解し,AIBNを開始剤としたラジカル重合により合成した.TF及びMPC重合体を塩化メチレン/エタノール混合溶媒にそれぞれ溶解し,均一溶液とした.これを所定の割合で混合しテフロン皿中に流延,溶媒を揮散させることにより均一膜を得た.TFにPMEあるいはPMCを10wt%添加しても均一膜が作成できた.XPSの分析で,SM複合膜表面にリン原子に由来するピークが現れ表面にMPCユニットが存在していること及びPMCを用いると表面に比較的濃縮されて混合されていることがわかった.SM複合膜を水あるいは40%エタノール水溶液に浸漬してもMPC重合体の溶離は認められなかった.力学的特性をS-S曲線より判断すると,MPC重合体の複合化によってもTF膜と変化が認められない.PRPと接触した際の血小板の表面への粘着数はTF膜に比較してSM複合膜では著しい減少が観察された.以上の結果,MPC重合体を高分子添加材としてSPUと複合化することができ,SPUの問題点の一つである血液適合性の改善が可能と結論できた.
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