本年度は湿式法(溶液反応法)により水酸アパタイト微粒子粉体を合成し、キャラクタリゼーションを調べた。また、水酸アパタイトの安定性や結晶学的性質を調べるために、陽イオンを各種置換したアパタイトについても合成および結晶学的検討を行った。さらに、α-TCP(リン酸三カルシウム)粉末を各種合成法により合成し、粉体の結晶性について検討した。 水酸アパタイト粉末は湿式法により合成を行い、二次粒子の凝集を防ぐために合成反応時に超音波を照射して粒成長を抑えた。得られた水酸アパタイト微粒子粉は、凍結乾燥あるいは100℃〜1200℃で加熱(乾燥または焼成)した後、得られた各試料についてX線回折法、赤外吸収スペクトル法、SEM、TEM、粒度分布測定、ゼータ電位測定などを行いキャラクタリゼーションを調べた。その結果、各加熱処理温度によって水酸アパタイト微粒子の性質が異なり、粒子の分散と加熱処理が薬剤担体用粉末設計に有効であることが確かめられた。一方、α-TCP粉末は、湿式法、乾式法及びプラズマ法により合成を試み、得られた結晶は各合成法で組成や結晶性が大きく相違していることが明らかになった。湿式法で得られたα-TCPは結晶中に炭酸イオンを含んでおり、プラズマ法で得られた結晶は単相であるが結晶性が低いことが解った。これらの水酸アパタイトとα-TCPの複合化と生体親和性を調べることが今後の課題である。
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