研究概要 |
1.デキストランにカルボキシル基とアミノ基を導入したカルボキシメチルジエチルアミノデキストランを磁性酸化鉄超微粒子に結合した、磁性流体(CMEADM)を新しく合成した。化学的安定性に優れる他、磁気特性等の基本物性は従来のATDM,CMDMと同等であった。デキストランの結合基の数が多くなると磁性流体としての粘度が高くなる。 2.ウイスター系ラットに静注後のDM複合体の生体内挙動と分布及び代謝の評価を各種臓器についてパルスNMR測定によりおこなった。CMEADMの血中での半減時間は9.2時間であり、ATDM,CMDMのそれぞれ1.5,2.8時間に比し長時間血中に滞留している。肝臓、脾臓以外の臓器へはATDM,CMDMと同様、取り込まれていない。 3.CMEADMをラット尾静脈に投与後、鉄反応染色標本から組織内の鉄分布を経時的に観察した。肝臓では投与から2〜3日にかけて徐々にクッパー細胞に集積されているが、1週以後鉄染色反応が全く観察することができない。脾臓では、血中のDMが減少するとともに辺縁帯に集積し、1〜6週にかけて徐々に辺縁帯外周に移動いく。投与12週後には辺縁帯には全く鉄反応が見られなく、赤碑随の生体本来が貯蔵している鉄に同化してくと思われる。他の臓器には全く鉄反応が観察されていないが、腹腔投与では腹部リンパ節にも鉄の発色反応が観察された。 4.このCMEADM投与した臓器の電子顕微鏡観察より、肝臓ではクッパー細胞の、脾臓ではマクロファージのライソソームに凝集している。電子線回折法より投与から4週まではその凝集が酸化鉄の回折像であったが、8〜12週後の回折像は非晶質となっていることからライソソーム内で鉄の分解、再生が行われていることが推察された。 5.ラット腹腔より採取したマクロファージを培養しDMの細胞内取り込みと凝集の時間経過をin vitroで形態的に観察した結果、細胞内のDMは食作用と飲作用で取り込んでいた。更にCMEADMはATDMやCMDMが作用直後から取り込むのに対し、12時間後で僅かに取り込む様子がわかった。
|