生体材料として多用されているチタンは、比較的加工しやすく、耐食性が高いという物理化学的特性、さらに他の金属と比較して毒性が少ないという生物学的特性のため、優れた生体親和性をもつインプラント材料と一般的に考えられてきた。チタンインプラントは生体親和性が高いにもかかわらず、生体組織内に溶出することが判明している。したがって、適切な表面処理をすることによって、耐食性を増加させるとともに、生体親和性を向上させる必要がある。 本研究ではチタン系インプラントの表面に蒸着した薄膜の密着性、化学的安定性、多孔性等のような問題点を解明し、より生体親和性の高い材料開発を目的として、イオンビームアシスト蒸着法を生体材料の表面加工に用いた。ハイドロキシアパタイトを蒸着したインプラントを家兎に埋入し、12週間後家兎を屠殺し、標本を作成した。このような標本を、超微量金属元素解析(マイクロイオンビーム局所的超微細領域PIXE法)し、新生体複合材料の生体親和性評価をin vivoで行った。これらの予備実験の段階で、イオンビームを用いて表面加工したインプラントが極めて優れた特性を示すことが判明した。
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