研究概要 |
本研究は平成7年度及び8年度の2年間の研究計画によって構成されている。平成7年度の計画はエラスチンの特異的で重要な機能である分子集合を有するペンタペプチド配列の繰り返しポリマーである(Gly-Val-Gly-Val-Pro)nに、抗血栓性を有するヘキサペプチド配列の繰り返しポリマーである(Val-Gly-Val-Ala-Pro-Gly)nをブレンドしたポリペプチドを基盤にし、リン酸化酵素によってリン酸化を受けるペプチド配列Arg-Gly-Tyr-Ser-Leu-Gly、及び経時的にAsnがAspに変換するペプチド配列Gly-Ser-Asn-His-GlyあるいはGly-Arg-Asn-Thr-Glyを付加した2種類のポリペプチド性高分子マトリックス[リン酸化反応性薬物放出制御マトリックス及びAsn-Asp変換性薬物放出制御マトリックス]を作製し、ついでこれらのポリペプチド性高分子マトリックス集合体への薬物の取り込み挙動を検討し、さらにポリペプチド高分子マトリックス集合体がリン酸化やAsnからAspへの変換によって脱集合する時の薬物の放出挙動を検討することであった。これらのポリペプチド性高分子マトリックスを構成する各々のポリペプチドである(Gly-Val-Gly-Val-Pro)n、(Val-Gly-Val-Ala-Pro-Gly)n、Arg-Gly-Tyr-Ser-Leu-Gly、Gly-Ser-Asn-His-Gly及びGly-Arg-Asn-Thr-Glyは作製できた。Arg-Gly-Tyr-Ser-Leu-Glyはリン酸化酵素によってSer残基がリン酸化されるという期待どおりの結果が得られた。Gly-Ser-Asn-His-Gly及びGly-Arg-Asn-Thr-GlyのT_<1/2>(Asnの50%がAspに変換する時間)を調べるとそれぞれ6days及び28daysであった。またその他のAsn-Asp変換ペプチド配列を合成してそれらのT_<1/2>を調べると、Gly-Arg-Asn-Ala-Gly,Gly-His-Asn-Ala-Gly,Gly-Ser-Asn-Ala-Gly,Gly-Gly-Asn-Ala-Gly,Gly-Val-Asn-Ala-GlyのT_<1/2>はそれぞれ18days、45days、52days、87days、111daysという興味ある知見が得られた。
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