研究概要 |
本研究は平成7年度及び8年度の2年間の研究計画によって構成されている。平成8年度は平成7年度で合成したVal-Pro-Gly-Val-Gly(エラスチンの特異的で重要な機能である分子集合を有するペプチド配列)に、サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼの基質であるArg-Gly-Tyr-Ser-Leu-Gly(ニワトリ卵白リゾチームの21〜26番目のアミノ酸配列)を15:1の割合でブレンドしたpoly[15(Val-Pro-Gly-Val-Gly),(Arg-Gly-Tyr-Ser-Leu-Gly)]を合成した。分子量は5万以上であった。このPoly[15(Val-Pro-Gly-Val-Gly),(Arg-Gly-Tyr-Ser-Leu-Gly)]の5mg/mlに1mM ATP存在下、3',5'-サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼを加えて、24時間、30℃にて加温し、リン酸化反応を行い、Poly[15(Val-Pro-Gly-Val-Gly),(Arg-Gly-Tyr-Ser(PO_4^<2->)-Leu-Gly)]を作製した。リン酸化の程度はγ^<-32>ATPを用いて定量した。このリン酸化ポリマーの分子集合について検討したところ、Tm(分子集合によって濁度が50%に到達したときの温度)がリン酸化する前のポリマーに比べて高温側に14℃シフトする性質を示した。ついでリン酸化ポリマーのpoly[15(Val-Pro-Gly-Val-Gly),(Arg-Gly-Tyr-Ser(PO_4^<2->)-Leu-Gly)]の5mg/mlにアルカリホスファターゼを加えて、30℃、4時間インキュベートして脱リン酸化反応を行い、Poly[15(Val-Pro-Gly-Val-Gly),(Arg-Gly-Tyr-Ser-Leu-Gly)]を作製した。この脱リン酸化ポリマーの分子集合について検討したところ、Tmはリン酸化ポリマーに比べて低温側に13℃シフトする性質を示し、最初のリン酸化前のポリマーとはほぼ同じTmを有した。これらのことから、酵素反応よる可逆的なリン酸化と脱リン酸化を行うことにより、分子集合制御の薬物放出制御担体の作製が可能となった。
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