冠動脈造影像から非線型平滑化処理と動的閾値処理を用いて抽出した血管セグメントの数は、医師が必要と判断した血管セグメントの数に比べてほぼ8割程度であった。抽出できなかった血管セグメントは非線型平滑化の適応できる大きさより細いものであった。血管抽出については今後直線強調処理等を追加することにより抽出率の向上が期待できる。血管枝の名前付けでは主要な血管の認識はおおむね満足のいくものであった。しかし、得られた血管領域には見かけ上重なり合ったために生じた偽の分岐点があったことから位相情報が正しく捉えられず、名前付けの判定を誤ることがあった。そのため血管の交差・重なりを判別し、個々の血管を識別する方法を開発した。血管領域を細線化して作成した芯線上で見かけ上も含めて分岐部を処理対象とした。個々の分岐部において、分岐部から十分に離れた部位で個々の血管の辺縁が識別できる部分の辺縁の位置から分岐部方向へ追跡する。これを分岐部から伸びる血管枝のおのおのに対して行う。これらの追跡結果を併せたのち、領域が同一であるか否かの判定により個々の血管部分の分離を試みる。もし分離できない場合には真の分岐部と判断し、分離できれば偽の分岐部と判断した上で各血管の領域を選別抽出する。この方法によりさらに忠実な血管の走行が得ることができた。この処理をシステムに加えたことにより血管セグメントの名前付けの正確さが増した。
|