1.わかっているのだがうまく説明ができないというある大学生の事例について考察し、日本心理学会第59回大会のワークショップ「説明分の産出とその認知的側面」において指定討論者としてその報告を行った。 2.さまざまな分野の用語を200語選定し、それぞれに対する熟知感測定と用語の口頭説明の実験を行った。その結果、 (1)用語の説明においては、その定義とでも言うべき主要部の他に、言い換え(これは要するに〜のことである。)、領域限定(これは〜という領域で使われることばである。)、上位概念(これは〜の1つである。)、具体例(具体的には〜や〜などがある。)、反対概念(これは〜とは違って、)、および補足情報などが含まれうることが明らかとなった。そして、実際の説明は、これらの組み合わせで構成されることが明らかとなった。組み合わせのされ方は多種多様だが、(a)言い換えや上位概念、領域限定についての言及は、ほとんどの場合、説明の最初に出現する、(b)主要部の定義内容が曖昧だと補足情報が出現しやすい、というような傾向が明らかとなった。 (2)概念の熟知感と説明の仕方の関係については、一般的には熟知感が高い概念ほど主要部の定義内容が明確で、具体例や補足情報も多く出現する傾向があり、熟知感が低い概念はしばしば主要部がないケースも認められた。しかし、熟知感が高いにも関わらず主要部がなく、具体例しか述べられていない場合もあり、その理由についてはさらに詳細な分析を行っていく必要がある。 (3)説明の仕方と説明の良さ・わかりやすさの関係については、現在実験進行中である。
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