集団間相互作用における偶発的・要素的感情が集団成員情報の認知処理に及ぼす効果を検討し、ステレオタイプの形成・維持・変化メカニズムを特定するための足掛かりとなる研究を実施した。具体的には、集団成員情報を認知処理するまえに喚起された偶発的感情が、集団成員の変動性(多様性)の知覚に及ぼす効果を、実験手法で検討した。48名の被験者は、ポジティプ感情群、ネガティプ感情群、ニュートラル感情群に無作為に配置され、それぞれの感情を喚起することが予備調査で確認されていたビデオを試聴し、感情状態を測定された。次に、被験者は、ある集団に所属する成員の、ある属性に関する得点を30名分を逐次的に提示され、その属性次元でのその集団の成員変動性を評定し、最後に、感情を再び測定された。ビデオ試聴直後の感情状態の操作チェックには、予測通りの有意な結果が確認された。変動性知覚の平均値は、ニュートラル感情群と比較して、ポジティブ感情群では、変動性が小さく(成員間の類似性が高く)評定され、ネガティブ感情群では、逆に、それが大きく(成員間の類似性が低く)評定されることを示していたが、これらは有意な効果ではなかった。最後の感情状態の操作チェックの結果から、集団成員情報を認知処理するときの感情の非持続性が問題点として指摘された。
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