本研究の目的は、現在行われている社会教育事業をどのように単位認定するかではなく、大学教育の目標の達成に資する社会教育事業が存在するのか、存在するとすればそれをどのようにカリキュラムに位置づけていくのかということにある。それには、社会教育事業と大学との教育目標が近接していることが条件となるため、自然生活体験事業「出雲わくわくウォーク」と島根大学教育学部との関連を重視し、教員養成の視点に立った事業評価と単位認定の実証を行うための調査を実施した。 調査の実施にあたっては、活動内容や期待される結果(教育目標やねらい)によっては、(1)教育実習やボランティア科目の単位としてだけではなく、(2)特定の教養・総合科目や専門科目の単位として、(3)場合によっては講義や演習の単位としても認定可能ではないか、という仮説を立てた。さらに、より精度の高い結果を得るために、調査対象を事業への参加経験をもつ現職教諭に限定した。 ここでは紙幅の関係で、調査結果の概略を述べるにとどめる。大学における単位認定には7割以上のものが肯定の意見をもっており、その認定の科目は実習に限定されず、演習等への多様な読み換えも想定されている。それは、相当する授業科目に「生徒(生活)指導論」「青少年指導論(学校外活動論)」「社会教育学」等が回答されていることからも実証された。加えて、事業への参加経験が学校現場で役立つという回答も得られている。 本研究の成果から、実践力の修得が期待される教育学部においては、教育実習のみにとらわれず、幅広い教育機会の中から新しい教育の観点を養うことが重要であるということが明らかとなった。社会教育事業への参加はその可能性をひらくものであり、今後の課題は大学がそれを側面的に支援することで教員養成から欠如した実践力を補完するための方法を構築することにあろう。
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