研究代表者は、自閉症の年長児・者を対象として、写真やイラストなどを用いて表情の認知能力に関する実験を行った(若松、1989)。しかしながら、本研究においては、写真カード等を用いた従来の方法と比べて、より精密で多様な刺激作成が可能なこと、厳密な実験統制が可能なこと、さらにはデータ収集の効率性などの理由から、パーソナルコンピュータによる刺激作成、刺激提示および反応の記録を行うことを計画した。また、その際には、カラースキャナを用いて刺激材料をパーソナルコンピュータに入力して実験刺激を作成したり、刺激提示や反応記録のためのソフトウェアを自作する予定であった。ところが、このソフトウェアの作成に、当初予想したよりもかなり多くの時間を要することが、研究を進めていくうちに次第に明らかとなり、結果的に期間内での本研究の実施は困難であった。しかし、本科学研究費補助金によって、コンピュータやスキャナなどのハードウェアは全て揃い、実験刺激作成の準備は整った。また、対象者の反応をコンピュータ内部に記録するための入力装置に関しても、ほぼ目処をつけることができた。さらには、研究を行う場所として予定している某精神薄弱者更正施設においては、研究協力の依頼に対する承諾は既に得られている。以上のような研究の進行状況から、近い将来には必ず、本研究の実施が可能となると考えられる。
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