わが国の高校教育は準義務化し、「多様な」生徒を受け入れる教育機関となっている。それに加えて、とくに公立高校の「活性化戦略」として、高校教育改革が積極的に展開されるようになっている。学校間連携などの履修方法や教授・学習方法の改革、あるいは特別非常勤講師の採用など、さまざまな動きが見られる。なかでも、単位制高校の創設は、硬直化した従来の高校教育のあり方を弾力化する方策として注目を集めている。本研究では、各高校の先導的実践を踏まえながら、単位制高校の社会的機能について理論的・実証的な検討を加えるものである。そうしたなかで、単位制高校の多様な実像が浮かび上がるとともに、高校教育改革の本質を探る手がかりが得られた。たとえば、(1)単位制高校は中学時に「不登校」を経験した生徒が再び「学び」を始めるひとつのきっかけを提供していること、(2)その一方で、現代社会の構造に絡めとられることによって「単位制高校」が一時的な「生徒収容機関」となる危険性があること、などである。また、単位制高校の一タイプである「総合学科」は次年度には42校にまで増える予定であるが、すでに一部の高校では従来の「総合選択制」への「縮減」が起こりつつある。しかも、そうした「効率化」を行なう高校ほど社会的威信が高いという矛盾が生じている。高校教育改革の「局所化」は、既存の構造を拡大再生産するにすぎない。したがって、高校教育改革はもっと根本的な転換へと軌道修正される必要がある。単位制高校の社会的機能を探ることで、高校教育改革の巨視的な意味合いを見定めることができた。
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