研究概要 |
今年度は,薩摩・大隅・筑後国における中世一宮制を分析するための史料・文献を収集し,一部検討を加えた。 まず中世一宮制を考案するための基本的な史料として『壬生家文書』,一宮制に関する記録・文書を分析するために『弁官補任』・『蔵人補任』等の各種補任類を購入した。 薩摩・大隅国の一宮制に関しては,両国の一宮の本家である石清水八幡宮の文書を東京大学史料編纂所で収集するとともに,石清水八幡宮に行き現地調査した。今後『石清水文書』を分析する事により,薩摩・大隅国一宮と朝廷・幕府との関係を具体的に解明し,各国一宮と中央との関係を明らかにしていく。 大隅国の一宮制に関しては,『祢寝文書』を黎明館で収集し,その成果の一部を「国内領主と一宮制との関係-建部氏と大隅国衙・正八幡宮との関係-」として報告した。その後建部氏の一族である佐多氏関係の『坂口文書』を史料調査により収集した。更に関係史料を収集して,大隅国衙・一宮と建部氏を中心とした国内領主との関係を解明していく。 筑後国の一宮制については,一宮である高良玉垂宮関係文書として,『鏡山(大祝)文書』・『宗崎(大宮司)文書』・『座主文書』・『高良玉垂宮神秘書』等を北九州歴史資料館より収集した。また高良玉垂宮の領家である醍醐寺に行き現地調査した。更に高良玉垂宮の末社と想定される大善寺玉垂宮関係文書として,『大善寺玉垂宮文書』・『御船家文書』・『隈文書』の各一部を久留米市教育委員会文化部で収集した。筑後国の在庁官人である草野氏については,『草野文書』を九州大学文学部国史学研究室で収集した。今年度収集した史料を基礎にして,今後更に関係史料を収集する事により今後筑後国一宮制を分析・解明していく。
|