日本列島各地の弥生時代遺跡から出土した石製・銅製・鉄製の武器の資料を、約50箇所の主要遺跡について基礎データを集成し、使用された武器の組成(とくに飛翔武器と衝撃武器との比率)の傾向を、地域ごとに明らかにすることができた。また、同じデータから、武器の金属化の過程についても、地域ごとに詳しく確認することができた。その結果、武器の組成と金属化については、九州地方北部とそれ以外の地域で差異があり、前者の地域では衝撃武器の比率が高く、金属化が早いことが具体的に判明した。 次に、武器を出土した集落遺跡の立地・規模・内容・継続期間等についてのデータを整理し、そのセトルメントパターンを分析する作業、ならびに墓群における武器副葬墓の比率や副葬内容を検討する作業を通じて、九州地方北部では武器の出現・発達期に併行して集団間および集団内の階層化が、その他の地域に比べて著しく進むことが判明した。この分析結果に、人類学による未開社会の武力抗争の研究成果を考え合わせることによって、九州地方北部とその他の地域における集団間の武力抗争には質的差異があり、前者のそれは、集団内外の階層化を助長し、階級関係や政治権力の形成過程に対して正の要因として働く性質を強く持つものと判断できた。 また、弥生時代の武器の種類の時期的な変化をあとづける作業により、時期を追って武器自体の階層化が進むこと、および政治的威信財としての機能をもつ非実用的な武器群が発達してくる過程が明らかとなり、かかる特徴が、古墳時代の武器体系にじかにつながっていく状況を読みとることができた。
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