コミュニケーション現場の状況が言語形式にどう関与するかについて、用例データの収集・整理を行うと同時に文法記述としてどう理論化するかについて考察した。言語発達との関連についてもデータを分析した。具体的に以下のようにまとめた。 (1)「『丁寧な依頼』のストラテジーと運用能力」(1995.『日本雑学』14-11)では、依頼状況と表現選択、表現配列を検討し、中学〜大学生に致る発達、過程をふまえて、総合的なポライトネス分析のモデル化を提案した。 (2)「ド思ウ、ハズダ、ニチガイナイ、ダロウ、福祉〜φ-不確実だが高い確信があることの表現-」『日本語類義現の文法』(宮島達夫、仁田義雄編、くろしお出版)では、推量表現の使いわけについて、従来の議論を整理し、問題点として「状況との相関」が考察されていないことを指摘し、不確定性の理論などの新知見から用法の違いを具体的に分析した。 (3)「情動的感動詞1/5」(語文63、1996)[印刷中]では、認知状況を一語に凝縮した感動詞について、その使いわけを具体的に整理・分析し、情動変動の記述モデルを提出した。 (4)「推量・比喩比況、例示-「よう/みたい」の多義性をめぐって-」(『日本語の研究』1995明治書院)では、表題の意味関係を「よう/みたい」の語義と構造の違いから分析した。
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