1.山田和幸氏(新潟大学卒)が調査・発見された谷崎全集逸文及び関連資料十一点に私が解説を付し、「谷崎潤一郎新資料紹介(1)〜(3)」と題して、「芦屋市谷崎潤一郎記念館ニュース」(平成七年九月、十二月、平成八年三月号)に発表した。 2.神戸の大富豪で、私財を投じて南蛮紅毛美術品を蒐集した事で知られる池長孟と谷崎潤一郎との交友関係に光を当て、谷崎記念館で平成八年二月六日から三月二十四日まで小特集「谷崎潤一郎と池長孟」展を開催すると共に、「芦屋市谷崎潤一郎記念館ニュース」(平成七年十二月)に紹介記事を執筆した。 3.谷崎潤一郎が、ラジオやテレビに出演した際のテープやビデオを各ラジオ局・テレビ局の協力で集め、その内容を活字化して、平成七年十二月に、「芦屋市谷崎潤一郎記念館資料集(一)映像音声資料」として刊行した。 4.従来、谷崎潤一郎の『細雪』については、反戦平和主義の立場に立つ芸術的抵抗だったという理解が一般的であったが、潤一郎が戦争に対して示した反応を、日清・日露・日中・太平洋の各戦争について精査し、『細雪』執筆当時の潤一郎に反戦的意図がなかった事を明らかにした。その成果は、「谷崎潤一郎と戦争-芸術的抵抗の神話-」と題して、平成八年三月「甲南女子大学 研究紀要」第31号に発表した。 5.谷崎潤一郎の養女だった観世恵美子さんの御協力により、これまで紹介されたことのない谷崎潤一郎宛の吉井勇・谷崎松子・武者小路実篤・三島由紀夫・棟方志功・古川緑波・花柳章太郎の谷崎潤一郎宛書簡約30通を借覧・調査し、谷崎の交友関係などについて、新たな情報を得た。また、谷崎潤一郎自身の未発表書簡も二通借覧できた。ただし、それらの内容は、まだ公表していない。
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