研究概要 |
本研究は,EU向け直接投資データーの整理,直接投資のEU経済に対する影響,EUの対多国籍企業政策の3点について明らかにする事を目的としていたが,それに対しては日米の対EU直接投資を中心に,以下のような知見が得られた. 第一に,アメリカ商務省並びに日本の大蔵省の発表している直接投資統計を整理する事によって,日米の対EU直接投資動向を明かにした.特に,日本が新規投資であるのに対して,アメリカは投資利潤の再投資が,重要な役割を果している事を示した. 第二に,日米の直接投資は,EU内部の域内経済格差を拡大する傾向をもっている事をつきとめた.量的に見れば日米の投資が先進国に集中する傾向を有しているからであり,質的に見ても,生産的雇用や現地調達を通じた地場経済とのつながりも中心国での方が好ましい実態が明かとなったからである. 第三に,EUが多国籍企業の活動に対して一定の規制を課すこと,並びに,その背景についても明かにした.1994年のEU規則は,EUレベルで活動する大企業に対して,労働者への情報提供を求めている.この事の背景としては,長くEUレベルでの産業民主主義を求めてきた労働組合からの圧力並びにアメリカのフーバー社がフランスからイギリスへと工場を移転した事件がEUの政治家に対して大きな衝撃を与えたからである. 以上が,今年度の研究によって得られた新たな知見である.今後は,日米企業に加えて,欧州系企業の動向にも注目していくとともに,NAFTAやASEAN等のEU以外の地域経済統合についても研究する事が求められよう.
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