わが国企業は現在、競争力とともに経済性を重視する投資行動への移行を迫られている。そのためには、経済的に合理的な投資プロジェクトの評価が必要である。その第一候補と考えられる伝統的なDCFアプローチは、将来の不確実性に対処する柔軟性とプロジェクト間の相互作用から生じる戦略的なオプション価値を捉えることができない。すなわち、投資機会の真の価値を過小評価することになる。こうした欠点が明確になるにつれ、ダイナミックなアプローチが操業されるようになった。本研究では、これらのうち現在最も注目されている実物オプション・アプローチに焦点を当て、実務への適用可能性という視点から分析・検討した。まず個別オプションの特徴・評価および企業行動へのインパクトを、次いで実物オプション間の実物作用を検討し、投資機会の現在価値が正味現在価値に結合オプション価値を加えたものとなることを示した。また、この過程で適用可能性に限界があること、金融オプションとの類似点・相違点を示した。そして、これらの分析・検討を通して、実物オプション・アプローチが、将来の不確実性をより慎重に分析するフレームワークを提供し、現存の方法では見過ごされていたダイナミックな戦略遂行の可能性がもつ潜在的価値を数値化し、その分析プロセスを通して将来の可能性に関する視野を広げ、さまざまな戦略代替案を検討する論理を明確にするだけでなく、プロジェクトが実行に移されてからも継続的かつ積極的な関与を必要とすることを明らかにした。
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